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第37回マースレニッツァとロシア極東連邦大学・函館校

シベリア鉄道で移動中に風邪をひいた。 排気ガスにまみれた空気を掻き分けて、姿をあらわした浦塩本願寺跡のくすんだ光景――それ以外の記憶がほとんどない。 そういえば、空港のチェックインで並ぶ列にて、サハリンから来た女の子と知り合った。 日本語教...
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第36回初めてのウラジオストク

シベリア鉄道の終点ウラジオストク駅にぶじ到着したものの、私はフラフラだった。 駅に着いたのが早朝で、迎えにきてくれたガイドさんとクルマでホテルへ向かったが、その間どんどん具合が悪くなっていった。全身ゾクゾクしたのは幽霊さんのせいだけではなか...
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第35回シベリア鉄道

「博物館のほかにもあちこち観光した」 と言いたいところだが、このときの私はハバロフスクでの多くの時間を、カフェなどでじっと過ごした。いっぽう、寒さに強いT君――ハワイ島でも山上で天体観測していた――は、巨大コートを着て街中へ繰り出し、書店な...
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第34回ハバロフスク郷土誌博物館とシソーエフ動物園

初めてのハバロフスクはあまりに寒く、ほとんどなんにもできなかった。 博物館を見学するのが、せいいっぱいだった。 「ハバロフスク郷土誌博物館」はたいへん立派な建物で、外見より中がかなり広い。入口の展示を見ただけでクタクタになった。そこは動物た...
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第33回関東軍の終焉~地獄の収容所・マガダンへ

ラーゲリの先輩は、長い暗闇をどう生きてきたのだろう―― 私は父から聞いた彼らの話がその後も忘れられず、なんだか他人事とは思えなかった。とくにXさんが働いたという「マガダン」が気になった。 「Xさんに、会ってみたいな。会って、マガダンの話をき...
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第32回強制収容所マガダンとフィル・ウッズ

昭和の時代に日ロ(日ソ)貿易業界を跋扈していた、ラーゲリの先輩。彼らが父の周辺にいたことまで前回書いた。その一人であった会社のOさんはおとなしい人で、ラーゲリの先輩たちのなかではロシア語が得意なほうではなく、「ダモイ」(家に帰ろう)くらいし...
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第31回シベリア抑留②

列車が着いた現場はシベリア、モンゴル、ユーラシアの各地。 冬には寒さのひどいところで、マイナス40度はざらであった。 一日の食糧は、ラーゲリによって違ったが、ほんのわずかな黒パンと、具などないにひとしい粥と呼べない粥(ロシア語でカーシャ)だ...
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第30回シベリア抑留①

それにしても、寒い。寒すぎる。 マイナス30度に届く体感温度。この寒さに慣れていない私たち日本人には、かなりきつい。 ところがかつてこの地で働いた、大勢の日本人がいたことを、みなさんご存知でしょうか? 戦後、当時のソ連各地に抑留され、シベリ...
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第29回アムール河の波

ハバロフスク空港から市内のホテル・インツーリストへ、クルマで3,40分ほどかけて移動した。途中、窓の外はうす暗い雪景色。人の姿はほとんど見えない。 空港からホテルのチェックインまでは、迎えの通訳さんがいてくれたが、そのあとはT君と二人きりに...
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第28回真冬のハバロフスク

真冬の夜のシベリア鉄道。 窓の外はえんえん続く、白く凍りついた森。 「こんな世界があるのか」と息をのむほど、どこまでも冷たく、美しい。 外気は零下30度、森の奥深くはもっと冷えているだろう。 そこが、テンのすみかだ。   かつて人びとは森を...