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ファーロード番外編 室蘭のこと(4)

30年ぶりに室蘭を訪れたという感慨は、ちっとも湧いてこなかった。 そのかわり、帰京して日が経つにつれ、室蘭のことが気になった。 芹澤夫妻と道南をドライブし、いろんな景色を見たはずなのに、赤茶けた山々に囲まれた港の姿が、ほかのどこ...
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ファーロード番外編 国立アイヌ民族博物館へ行ってきました(3)

夕刻、佐々木史郎先生と博物館を出て、白老駅へ歩いて向かった。 雨は上がり、広く白っぽい道路にはときおりスピードを上げたクルマが通りすぎるだけで、人はほとんど歩いていない。博物館のお客さんはみな自家用車やバスで駐車場を出たあとなのか、閑...
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ファーロード番外編 国立アイヌ民族博物館へ行ってきました(2)

新千歳空港から白老のアイヌ国立民族博物館まで一時間半ほどクルマで走る。 芹澤夫妻が迎えに来てくれなかったら、おそらく私は現場へたどりつけなかっただろう。彼らはまず、飛行機を降りてよろよろと出口に現れた私を迎え、愛車に乗せ、おにぎりを与え・...
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ファーロード番外編 国立アイヌ民族博物館へ行ってきました(1)

私が20年にわたった出版社勤めをやめて、闘病をへて、はじめて書き下ろしの原稿に取り組んだのが、毛皮獣・クロテンについての話だった。本は『毛の力 ロシア・ファーロードをゆく』というタイトルで2014年の年末に出版されたのだが、その本を書くにあ...
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第56回アイヌ「送り」の儀式と美流渡

しばらくクルマを走らせると、青く大きな看板が出た。 「ぎゃあ、あれがミルト?」 <美流渡> と書かれた文字が、目にとびこんできた。 美流渡はこっちですよ、と道案内されている標識を見て、私たちは盛り上がった。 あんな字を書くんだ~、...
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第55回「もっと、もっと」の罪

いつの時代にも懸命に働いた人たちがいた。 その人びとは、ただひたすら目の前の仕事にまっしぐらに取り組んでいたはずである。 一生懸命、やっていただけ。それなのに、情熱をもって仕事をしていたその日々が、いつしか自分自身の身体をむしばんでいた...
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第54回ミルコ、ミルト(美流渡)へ行く②

北海道の道は、広い。ロシアのよう。 遠くにゆったりと連なる山々に向かって、えんえん続く広い道を、ぐんぐん進んだ。 道はあっちゃんにとって慣れたもののように見えた。そしてしばらく行くと、こう言い出した。 「このへんの病院に、私、入院して...
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第53回ミルコ、ミルト(美流渡)へ行く①

芹澤君の家では、巣立っていった娘の部屋が空いていた。 そこを使わせてもらう。 部屋に入ると、ベッドがあるのに、その真横にマットレスも敷かれている。 「寝心地のいいほうを使ってね」 と、ホストマザーのあっちゃん。 「じゃあ、...
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第52回非常勤講師の夏休み・後半へ

毛の伸びに比例して、ニャンキーはしだいに元気を取り戻し、なんだか以前より若返った。 毛刈り直後はナメクジのようだったが、またネコになってきた。 目の輝きが増して、顔つきが愛らしくなった。 フレンドリーになり、性格まで明るくなったみたい...
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第51回ニャンキーの「毛のない生活」

イリーナと過ごしたロシアから帰国した翌日、わが家では<ネコの毛刈り>という一大イベントが待ち受けていた。 ニャンキーは、私が六本木に住んでいた編集者時代に、六本木駅前で衝動買いしたネコだ。ネコに15万円も使ったことに、私の両親は「ミルコは...
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