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第11回クロテン人気の終わり②

ソ連の崩壊、経済の自由化にともなって、クロテン人気は落ちていく。 ヨーロッパや中国から格安の養殖ミンクが流入し、価格は暴落した。 インフレによって狩猟に必要な銃や弾など用具価格も高騰、さらに、欧米諸国での動物愛護運動の高まり、また化学繊維の...
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第10回 クロテン人気の終わり①

「江戸時代の記録を見ると、日本はかなりクロテンを輸出しています。本州にクロテンはいませんが、北海道と樺太にいますからね、アイヌが獲ってきたクロテンを集めてきて、それをサンタン人に売っていた。江戸幕府がかかわったクロテンは、アムールから中国へ...
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第9回 サンタン人のクロテン交易③

ロシアでコサックのエルマーク(第2回「ロシアとクロテン」参照)がシベリア遠征をしていた頃、中国がどうしていたかというと、時代は「明」の後期、国は傾き始めていた。 永楽帝の時代には綿織物の生産など産業が発達し、江南・蘇州が流通経済の中心地とな...
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第8回 サンタン人のクロテン交易②

「みんぱく」(国立民族博物館)の佐々木教授にアポをとり、インタビューの了解を得た私は、大阪・千里を目指した。 2月半ばの午後6時。陽はとうに暮れて、外気は冷えている。 万博記念公園駅に降り立つと、高架の向こうにライトアップされた「太陽の塔」...
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第7回 サンタン人のクロテン交易①

国を越えて人々が文物を交換するグルグル・ポイントが、古来より世界のあっちこっちにあった。 その一つに、18~19世紀にわが国の北方で栄えた、「サンタン」がある。 サンタンとは現在のロシア極東のアムール川下流域とサハリン(樺太)あたりの地域で...
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第6回 クロテン村の住人

ガタガタ道を走ること数時間、<森の民・ウデヘ>の住む村に到着する頃には、全身が壊れそうになっていた。 乗り物酔いはピークに向かおうとしていた。 手足の先が冷たくなってきた。 朦朧とした意識の中で、ここに至る経緯を振り返ってみる。 ただひたす...
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第5回 タイガの一滴

私たちは黄みどり色のエスセブン(S7)に乗って、ハバロフスクへ向かった。 成田から飛行機で2時間半も飛べば着くこの地は、かつて清朝のものだった。当時の清国と帝政ロシアのあいだに交わされた愛琿条約(1858)と北京条約(1860)、この二つの...
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第4回 毛のないクロテン

毛を剥ぎ取られた状態のクロテンを見たときのショックは、忘れられない。 <毛のない>クロテンは、細く、小さな塊となって、真っ白な雪の上に横たわっていた。 紅い肉が、痛々しい。 毛のないクロテンには、もう誰も用がない。 人間はフサフサの毛皮だけ...
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第3回 罠にかかったクロテン

クロテンを追って、私の旅は始まった。 第一の旅では<ロシアのアマゾン>と呼ばれるビキン川流域を訪れた。ロシア極東にひろがる、タイガの森である。 その村で、いまもクロテン猟をする猟師に、私は会えた。 本稿の扉に掲げたクロテン写真は、彼からいた...
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第2回 ロシアとクロテン

地球の北半分を覆うように広がる、現在のロシアという国。 この広範な国土を、ロシア人が持つに至ったその背景には、経済動物・クロテンの存在があった。 ロシア平原の北方、シベリアの森林(タイガ)地帯に棲んでいた毛皮獣・クロテン。 そこでのびのび生...