第14回殺しながら生きる③

「自分も食われて糞になる。でも自分が生きてる間は、食わせてもらう。それが自然の中において、人間という生き物と、人間が生きるために関わる他の種の生命体とが結ぶ関係です。お互いに生かし合う関係のなかから、殺すという行為が出てくる。殺すことは生きること、生きることは殺すこと。
そうした自分に気がついたとき、命たちに優しくなれる。つまり食い物を無駄にしない。そして自分はせいいっぱい、生きる。生かされる。自分がせいいっぱい生きなければ、ダメですよね?生かしてもらっているのですから。でも、それをいまの人間たちは出来ていないと感じます。・・・」
田口さんは、たくさん話をしてくれた。インタビューの続きはあらためて掲載したいと思う。

日が暮れる頃、研究室を出た私は、けさ山形駅前のロッテリアで買ったエビバーガーの残りを袋から取り出し、気が狂ったようにほおばった。
ガンになる前は大好きだったファストフード。この日は田口研究室に乗り込む前にパンチの利いたものを無性に食べたくなって買ったが、すぐにバスが来たので紙袋に包んで鞄に仕舞っておいたのだった。
さめて硬くなったバンズを勢い良く噛みちぎる。マヨネーズソースで口をベタベタにして、こんなに時間の経ったファーストフードを食べるのは最も体に悪いなあと思いながらも、食べるのをやめられなかった。

停留所で雪山を下るバスを待っているのは、私のほかに女の子がひとり。気温はマイナス3度。1月のハバロフクに比べりゃどうってことないか。いや、ロシアより寒いと感じる。風が強まってきた。
「・・・・バス、遅れないで、ちゃんと来てくれますかね?」
と話しかけてみると、「それが、いつも遅れるんですよー」と彼女は笑ってこたえる。
ちょっと会話してあったまったところに、ほぼ時間通りにバスが来た。
「今日はツイてる」というようなサインを、彼女が送ってきた。
芸工大から仙台へ向かうバスの中からは、雪をどっさりかぶった蔵王の山々が見えた。
一番前の席に深く腰掛けてじっとして、白い山を見続けながら、そういえばーーとふと思う。
・・・・クロテンについて田口さんとひとことも話していないや・・・・
それに気づいたせいか、古いエビバーガーの油のせいか、キリリと胃が痛み始めた。

芸工大付近の景色

<つづく>

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