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第31回シベリア抑留②

列車が着いた現場はシベリア、モンゴル、ユーラシアの各地。 冬には寒さのひどいところで、マイナス40度はざらであった。 一日の食糧は、ラーゲリによって違ったが、ほんのわずかな黒パンと、具などないにひとしい粥と呼べない粥(ロシア語でカーシャ)だ...
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第30回シベリア抑留①

それにしても、寒い。寒すぎる。 マイナス30度に届く体感温度。この寒さに慣れていない私たち日本人には、かなりきつい。 ところがかつてこの地で働いた、大勢の日本人がいたことを、みなさんご存知でしょうか? 戦後、当時のソ連各地に抑留され、シベリ...
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第29回アムール河の波

ハバロフスク空港から市内のホテル・インツーリストへ、クルマで3,40分ほどかけて移動した。途中、窓の外はうす暗い雪景色。人の姿はほとんど見えない。 空港からホテルのチェックインまでは、迎えの通訳さんがいてくれたが、そのあとはT君と二人きりに...
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第28回真冬のハバロフスク

真冬の夜のシベリア鉄道。 窓の外はえんえん続く、白く凍りついた森。 「こんな世界があるのか」と息をのむほど、どこまでも冷たく、美しい。 外気は零下30度、森の奥深くはもっと冷えているだろう。 そこが、テンのすみかだ。   かつて人びとは森を...
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第27回劇団員のアルバイト

氷屋さんのほかに、高校時代のアルバイトでもうひとつ思い出深い一件がある。 吹奏楽部でホルンを吹いていたナナちゃんから、「劇団の仕事しない?」と誘われた。 ナナちゃんはすでにそのバイトを何度かやっており、リハーサルと本番で一日5000円もらえ...
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第26回ロシアの寒さ

ロシアの寒さが手ごわいということは、おおいに予測がついた。 行ったことがないのにわかるのか? いや、私にはわかるのである。なぜなら私は氷屋さんでアルバイトをしたことがある。 あれは忘れもしない、高校三年の夏休み。 吹奏楽部でクラリネットを吹...
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第25回毛皮のコート

「・・・俺、ハバロフスク行きに、付き合ってもいいよ」 テレビ局勤務のT君が、忘年会の帰り際にそう言い出したところまで前回書いた。 救世主、あらわる。 マイナス30度の世界にたったひとりで足を踏み入れる勇気のなかった私だったが、これで一気にプ...
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第24回ハワイ島の思い出

モスクワ・サンクトペテルブルクから戻ってまもなく、友人7人で忘年会をやった。 私がそんな大人数の集まりに行くことはめったにないが、このメンバーとは何年も続いている。 メンバー構成はテレビ局、出版社、広告代理店、通信社、などに勤める仕事を通じ...
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第23回ビザをとる

ロシア大使館の近くにある飯倉のキャンティで、おひとりさまランチをとっている。 会社をやめて以来、質素な暮らしに徹している私が、都内の名店にいるのにはわけがある。 なぜならビザをとるのに苦労した。なので「ひとり打ち上げ」をしているのである。 ...
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第22回ロシアへ行こう

「ロシアへ行こう」 その思いつきは、私の心を明るく照らした。 キラキラした粉が、天から降ってくるような気がした。 さっそく旅に向けた資料を集めようとした。 ところが気をつけて見てみると、ロシアについての出版物は、他の近隣諸国と比べて驚くほど...