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第81回ダッタン人の踊り(3)ロングトーンと楽器の手入れ

私は早く合奏がしたかった。 そのためには、まず楽器を鳴らすことができなければ。 5つの黒い塊を繋げたあとに、先端にリードを付けた歌口の部分を咥え、息を吹き込んでみる。 「ぶぉ~」という、鈍い音が出た。 幼い頃からベニーの音に馴染んでいた私に...
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第80回ダッタン人の踊り(2)クラリネットとの出会い

わが中学(我孫子市立久寺家中学校)にブラスバンド部が発足するとのうわさをきいたのは、合唱部に入ってしばらく経ったある日のことだった。 新しく赴任してきた横山乙和おとかず先生がメンバーを集めるという。横山先生――乙和(おとかず)という名前から...
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第79回ダッタン人の踊り(1)吹奏楽との出会い

ダッタン人の話の前に、ここで私と吹奏楽との出会いについて、少し書いておこうと思う。 少し、と言いながら、けっこうな長さになってしまうかもしれない。 というのもこの件は自分そのもののようなところがあるからだ。 中学2年で、クラリネットと出会う...
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第78回マラッカ王国のナゾ(10)永楽帝の蒙古親征

1511年に砲弾でマラッカを襲ったポルトガル人が、いち早くアジアに進出。アジア東方地域につぎつぎ来航し、やがてマカオに拠点を築くと、阿片や香料(竜涎香=マッコウクジラの排泄物)などを持ち込んで、それらは大陸へと流れる。かつての鄭和の道は、海...
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第77回マラッカ王国のナゾ(9)続々・宦官の鄭和

今日は机に向かおうと、小さな書斎をあたためる。 会社時代から使っている足温器(Nationalと書いてあるからそうとう古い)と温風機に電源を入れ、コーヒーを作ってちょっと待つ。 毎年、この季節になると、抗がん剤治療を思い出す。 私の闘病して...
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ファーロード番外編 室蘭のこと(4)

30年ぶりに室蘭を訪れたという感慨は、ちっとも湧いてこなかった。 そのかわり、帰京して日が経つにつれ、室蘭のことが気になった。 芹澤夫妻と道南をドライブし、いろんな景色を見たはずなのに、赤茶けた山々に囲まれた港の姿が、ほかのどこよりも私に何...
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ファーロード番外編 国立アイヌ民族博物館へ行ってきました(3)

夕刻、佐々木史郎先生と博物館を出て、白老駅へ歩いて向かった。 雨は上がり、広く白っぽい道路にはときおりスピードを上げたクルマが通りすぎるだけで、人はほとんど歩いていない。博物館のお客さんはみな自家用車やバスで駐車場を出たあとなのか、閑散とし...
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第76回マラッカ王国のナゾ(8)続・宦官の鄭和

あのあと恐ろしい話を聞いてしまった。 マラッカ王国のナゾ(6)「宦官の鄭和」の回を読んだ友人が、「そういえばずいぶん前にこんな本、買ってたんだわ~」と言って、一冊の文庫本をくれた。その名も『宦官』。パラパラ開いて斜め読みすると、どうやら私の...
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ファーロード番外編 国立アイヌ民族博物館へ行ってきました(2)

新千歳空港から白老のアイヌ国立民族博物館まで一時間半ほどクルマで走る。 芹澤夫妻が迎えに来てくれなかったら、おそらく私は現場へたどりつけなかっただろう。彼らはまず、飛行機を降りてよろよろと出口に現れた私を迎え、愛車に乗せ、おにぎりを与え・・...
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第75回マラッカ王国のナゾ(7)マルコと鄭和

まずチャンバ(占城)へ、そこからボルネオ島の西を通って南下してジャワへ――、と鄭和の航海がはじまったところまで前回書いた。 鄭和の初出航は1405年のことだが、その100年以上前にマルコ・ポーロが中国地方を見聞したときもやはり同じルートが使...