ファーロード

第5回 タイガの一滴

私たちは黄みどり色のエスセブン(S7)に乗って、ハバロフスクへ向かった。 成田から飛行機で2時間半も飛べば着くこの地は、かつて清朝のものだった。当時の清国と帝政ロシアのあいだに交わされた愛琿条約(1858)と北京条約(1860)、この二つの...
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第4回 毛のないクロテン

毛を剥ぎ取られた状態のクロテンを見たときのショックは、忘れられない。 <毛のない>クロテンは、細く、小さな塊となって、真っ白な雪の上に横たわっていた。 紅い肉が、痛々しい。 毛のないクロテンには、もう誰も用がない。 人間はフサフサの毛皮だけ...
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第3回 罠にかかったクロテン

クロテンを追って、私の旅は始まった。 第一の旅では<ロシアのアマゾン>と呼ばれるビキン川流域を訪れた。ロシア極東にひろがる、タイガの森である。 その村で、いまもクロテン猟をする猟師に、私は会えた。 本稿の扉に掲げたクロテン写真は、彼からいた...
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第2回 ロシアとクロテン

地球の北半分を覆うように広がる、現在のロシアという国。 この広範な国土を、ロシア人が持つに至ったその背景には、経済動物・クロテンの存在があった。 ロシア平原の北方、シベリアの森林(タイガ)地帯に棲んでいた毛皮獣・クロテン。 そこでのびのび生...
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第1回 クロテンを追って

クロテンの話を、私は本に書いたことがある。 「え? クロテンってなんですか?」 みんなそう聞くのだが、クロテンはクロテンである。 クロテンは、古来よりヨーロッパ・ロシアで商品としての毛皮を狙われてきた小動物だ。「やわらかい金」「走るダイヤ」...