クラリネットと私

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第107回真島俊夫さんの「レ・ジャルダン」④

そのときのことを、わたしはまだ書くことができない。父の死顔やその前後のことをふと思い出すだけで、いまはまだとても胸が苦しい。焼き場から持ち帰った骨を、父のいつも座っていた大きな椅子のそばに置いて、仮の小さな仏壇をつくって花を手向け、ただひと...
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第106回真島俊夫さんの「レ・ジャルダン」③

カンオケ宣言以降、内臓が飛び出そうな悲しみと不安を抱えて過ごした。親との別れを覚悟することが、これほどたいへんなことだったなんて。だれもが通る道であり、多くの友人知人がすでに通った道だけれど、あのとき私はかれらになにをしてあげられただろう。...
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第105回真島俊夫さんの「レ・ジャルダン」②

父が倒れた。といってもパタリと倒れたわけではなく、風邪をこじらせて、じわじわと具合が悪くなり、どうにもならなくなったあげくのことだった。夜中になると激しい咳が出て、眠ることができず、食欲もなくなった父は、日に日に弱っていった。父のことが心配...
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第104回真島俊夫さんの「レ・ジャルダン」①

会社を辞めて、二十年住んだ東京を離れて、だいぶ経った。退社時に発症した乳がん闘病について書いた『毛のない生活』とその続編『似合わない服』(ともにミシマ社)が出版されて以降、本の執筆や大学講師などをやってきたが、2019年の年末にシンガポール...