久しぶりに、大阪へ行った。
前回は拙著『バブル』刊行のころ、朝日放送の「おはようパーソナリティ」に出演させていただいたのだった。そのときの話を私は光文社「本が好き。」の連載に書いているが、当時パーソナリティの道上洋三さんと自分とのあいだに透明の衝立が置かれていたという、新型コロナウイルス騒ぎ真っ盛りのころだった。
あれから二年半。マスクもマストでなくなって(それでも皆つけている、私はなるべくはずしている。免疫力向上のため)、のびのびと旅ができそうだったが、今回は伯父のお見舞いという用事だったので、一泊で用だけ済ませる行程を組んだ。
伯父は生駒山の病院に入っていた。
満開の桜のなか、いとこのかずちゃんの運転で山を越え、会いに行った。
しかし、高齢者の多い病院では依然きびしいコロナシフトになっており、面会はオンラインだという。せっかく遠くからやってきたのに、しかも同じ病院の中にいながらパソコンの画面を通して会うのである。
私とかずちゃんと伯母(つまりかずちゃんの母で伯父さんの奥さん)と、画面の前に三人並んで座り、大写しになった伯父に話しかける。黒かった髪は白く、痩せている。音声が悪く、伯父の肉声は聞くことができなかった。私は父から、伯父への卒寿のお祝い品を預かっていたが、それを手渡すことも許されなかった。
オンライン面会30分のあと、生駒山から瓢箪山へ移動した。
伯母に、創作天ぷら「いち」(一)というお店で、ごちそうになった。
シソ巻のえび(絶品!)やふかふかのしいたけ、シャキシャキのたまねぎ、ぷりぷりのアスパラといったご主人が愛車を駆って朝調達されたらしき新鮮な食材の天ぷらがぞくぞく、そのあいまにはお出汁で煮た揚げ餅やとろろなどをいただいて、すべて美味しかった。店内に品よく並べられたうつわや掲げられた書にも注目。BGMはハワイアン、だった。
翌日には大阪でずっと会いたかった人に会えた。
このホームページの管理人、ゆうせいさんである。
「あたらしいホムペの写真を撮ろう!」となって、二人で肥後橋近辺から大阪市役所、中之島図書館、中央公会堂前などを歩き回って撮影した。その成果は、このサイトに順次掲載される。
少し前に体調を崩していたゆうせいさんはコロナをまだ警戒していて、ランチは屋外で摂ることにした。ゆうせいさんおすすめのオープンカフェ、ガーブ・ウィークスをめざして歩いていると、途中で管楽器を持った人がウロウロ、警官の恰好をしている。大阪府警察音楽隊の方々だった。
「これから演奏するので聴いていってください」
と声をかけられたので、私たちは並べられたパイプ椅子に腰かけた。
青天。そして、ブラスバンド。神様のプレゼントに思えた。
私は中高と吹奏楽部に所属しており、その後も楽器をつづけてきたので、聴けば言いたいことがあふれてくる。この日はなんだかとても穏やかな気持ちで聴けた。
神様に祝福された再会。心の休日。
大阪府警察音楽隊は、小さな編成で、やさしい音をしていた。
「シンコペイテッド・クロック」から「二億四千万の瞳」まで脈絡なく誰もが楽しめるような幅広い選曲。アンコールは、やしきたかじんさんの「やっぱ好きやねん」だった。
ミニ演奏会が終わって、ガーブ・ウイークスへ。
しかしたいへん混雑していたので、橋を渡って中之島LOVE CENTRALへ。
そこもいっぱいだった。屋外席に、注文しなくても使えるコーナーがあったので、「買ってきて、ここで食べよう」ということになった。
5分ほど離れたドトールコーヒーへ行き、ゆうせいさんはミラノサンドC(照り焼きチキン~ハニーマスタード&ガーリックソース)とアイスティー、私は全粒粉サンド(大豆のミート~豆と野菜のトマト煮込み)とアイスコーヒーを購入、中之島LOVE CENTRALへ戻って、白いベンチで川を眺めながら語らった。
「うっわぁ、おいしい~‼こんな味の濃いもん、ひさしぶりに食べたわぁ~」
と感激しながらミラノサンドCを頬張るゆうせいさんを見て、私はうれしかった。元気になってくれて、ほんとうによかった。
ゆうせいさんは3年前まで阪大で特任研究員をやっていた。その業務は多岐にわたっていたらしく、研究者のシンポジウムを企画・進行するなどもあって、いろんなジャンルの専門家をご存じなのである。
「東南アジアの先生方の飲み会に呼ばれて行った」こともあるらしい。なんとうらやましい。本コーナーに書いているように、私の心はいま大航海時代にある。
ゆうせいさんがご存じの、マラッカやこの地域の専門家がおられるなら、ぜひお教え願いたいところだ。
「ファーロード」を書いていたときも、いろんな研究者の先生方からご教示をいただいたので、「スパイスロード」でも面白い先生に出会いたい。
<つづく>
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